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2013.10. 3

『なめこ文學全集』第3巻発売記念!小鳩まり先生特別インタビュー(後編)

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『なめこ文學全集 なめこでわかる名作文学』第③巻発売を記念し、全3回でお送りする「小鳩まり先生特別インタビュー」。
本エントリはそのインタビュー(後編)となります。

インタビューの(前編)(後編)はこちらからどうぞ
小鳩まり先生特別インタビュー(前編)
//namepara.com/atochi/info/report/2045.html

小鳩まり先生特別インタビュー(中編)
//namepara.com/atochi/info/report/2188.html



▼この画像を使うのも今回がラストです
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写真手前・小鳩まり先生 写真奥・なめこデザイナー河合
(聞き手・ダンボールなめこ)

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0920_danboru.pngインタビュー(前編)では『なめこ文學全集』全体のお話、インタビュー(中編)では第③巻収録順に「ごんぎつね」「羅生門」「舞姫」「高野聖」の制作秘話をうかがってきました。

0920_danboru.pngいよいよ第③巻の後半4篇「風立ちぬ」「やまなし」「南総里見八犬伝」「カインの末裔」についてお聞きしていこうと思います。

 第3巻収録話リスト(収録順)
  新美南吉「ごんぎつね」
  芥川龍之介「羅生門」
  森鴎外「舞姫」
  泉鏡花「高野聖」
  堀辰雄「風立ちぬ」
  宮沢賢治「やまなし」
  滝沢馬琴「南総里見八犬伝」(後編)
  有島武郎「カインの末裔」

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◆堀辰雄「風立ちぬ」
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0920_danboru.pngきましたね〜「風立ちぬ」。

0920_danboru.pngジブリの「風立ちぬ」が7月公開ということで、6月28日発売のcomicスピカに掲載された作品です。


130927_kobatosensei.jpgこのお話はすごく「難しかった」んです。

0920_danboru.png「難しかった」?

130927_kobatosensei.jpg堀辰雄さんの原作を読めば読むほど「だいじな言葉」が多いんです。

130927_kobatosensei.jpgすべての文、すべての言葉に色々な意味合いが含まれていて、読み返すたびに新しい発見や違う見え方ができるというか...。

130927_kobatosensei.jpg何度も読むことで発見がある作品なんですよね。

130927_kawai.jpg派手な演出やセリフ回しはないけど、心の深いところに刺さる作品だと感じました。

0920_danboru.png読む人によっても受ける感覚も違うんでしょうか。

130927_kobatosensei.jpgたとえば...漫画の構成を練っているときに「風立ちぬ」の"風"ってなんだろうと考えてみたんです。

130927_kobatosensei.jpg担当さんと話し合った結果、それは"時間"かもしれない、と思って描きました。

▼"風"とは"時間"...「それは切ないまでに愉しい日々」
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130927_kobatosensei.jpg「風立ちぬ」はとても繊細なお話なので、そういう言葉のどこかひとつ理解がずれてしまうと、必要なシーンの選び方や演出方法を間違えてしまう恐れがあります。

130927_kobatosensei.jpgそうするとまとめているうちに「これでいいのかな」と迷ってしまって...原作を読み返す。

130927_kawai.jpgするとまた新しい発見がある、ってことですね。

130927_kobatosensei.jpgだから「風立ちぬ」は一番ネームに苦労した作品でした。

(担当編集べ氏曰く「珍しく直接喫茶店で会って、話し合いながらネームを推敲した」とのこと)

0920_danboru.png漫画家さんと編集さんって毎回喫茶店で打ち合わせしてるんだと思ってました笑


0920_danboru.png「風立ちぬ」を漫画にする上で工夫した部分はありますか。

130927_kobatosensei.jpg自然で感情を表現させるようにしました。

0920_danboru.pngキーワード「自然」!ここできましたね。(インタビュー前編参照)

130927_kobatosensei.jpg目に見える景色って実は感情の状態によって違うと思うんです。

130927_kobatosensei.jpg「風立ちぬ」は病院のシーンが多いので、いつも同じ病室内だからこそ、登場人物の心情に合わせてできるだけバリエーションをつけて表現するようにしました。

130927_kobatosensei.jpg窓から見える風景、光の入り方、陰のさし方...その違いで感情を表せたらと。

(ダンボールなめこ、単行本を確認)

0920_danboru.pngほんとだ...この「私」と「節子」が語り合うシーンなんか、全く同じ時間と場所なのに雰囲気が真逆ですね...。

▼未来への希望を語るシーン
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▼未来を悲観するシーン
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130927_kawai.jpgそれぞれのコマがどんな"感情"を表現しているかに注目して読むと、さらに味わい深くなりますね。




◆宮沢賢治「やまなし」
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0920_danboru.png宮沢賢治は第①巻「セロ弾きのゴーシュ」、第②巻「注文の多い料理店」に続き3回目の登場です。

(担当編集べ氏からひとこと「皆勤賞です!」)

0920_danboru.png本作の特長はなんといってもこの「なめこ(はえたて)」ですよね〜。

130927_kobatosensei.jpg日々「なめこ栽培キットDeluxe」でなめこを栽培していると、この子たちも登場させたくなったんです。

130927_kobatosensei.jpg「やまなし」はストーリー上キャラが成長するというのが頭にあったので、「登場させてもいいですか」と確認してもらいました。

130927_kawai.jpgキャラクターのレギュレーションがありますからね。もちろん全く問題ありませんでしたが。

(配役を考えるのは小鳩先生ですが、最終的にビーワークスがチェックをしています)


0920_danboru.pngインタビュー(前編)で、「やまなし」では水中の泡で空間の奥行きや色合いを表現しているとおっしゃっていましたが、ここについて教えてください。

130927_kobatosensei.jpg「やまなし」では「泡」をポイントにしようと思いました。

130927_kobatosensei.jpg色々な泡の表現をしようと思ってがんばりました。

130927_kobatosensei.jpg先程の「風立ちぬ」は病室でしたが、「やまなし」もずーっと水の中のお話なので画面に変化を出したかったんです。

0920_danboru.pngそれが「泡」?

130927_kobatosensei.jpg泡の形はもちろんですが、書き方を少しずつ変えてみました。

130927_kobatosensei.jpgトーンを貼って削る、トーンを荒くする、トーンを貼らない、主線を引かない...という感じです。

0920_danboru.png泡だけでそんなにたくさん!

0920_danboru.pngお気に入りの「泡」があれば教えてください。

130927_kobatosensei.jpg2回目に"カワセミ"が襲来してきたときの泡ですかね〜。

▼トーンを貼って削った泡
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▼主線を引かない泡&荒いトーンを貼った泡
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▼ホワイトを使った泡
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▼トーンを貼らない泡
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▼ベタを使った泡
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130927_kobatosensei.jpg泡の形の方だと、「あれはやまなしだ」というコマの泡なんかはカプセルの中のイメージで描いてます。

0920_danboru.pngああ、人造人間が入ってるような培養カプセルですね笑

130927_kobatosensei.jpgそうですそうです笑

▼あと二日ばかり培養されるやまなし
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130927_kawai.jpg「やまなし」は「泡」に注目!ですね。



◆滝沢馬琴「南総里見八犬伝」(後編)
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0920_danboru.png「八犬伝」は描きおろしですね。

(担当編集べ氏からなめぱら読者の方へ:『なめこ文學全集』第②巻に前編が収録され、後編の本エピソードで完結です)

0920_danboru.png大長編の原作をコンパクトにまとめていますが、なめこ版「八犬伝」にはどんな楽しみ方がありますか。

130927_kobatosensei.jpgとにかくいっぱいレアなめこが出てきますので、「このなめこ出てきた!」という発見を楽しみながら読んでほしいですね。

130927_kobatosensei.jpgたとえばキウイなめこが「自分の髑髏だ」といって全然形が違うのにマサルを差し出すとか、甘いものを与えないといけないので船虫の役は飴をなめているなめ細工にしたりしています。

▼髑髏役 マサル(ハロウィン原木バージョン)
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▼稀代の悪女はなめ細工
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130927_kobatosensei.jpgあと原作の設定にあわせた配役といえば、後編で大活躍する山林大八役のクラッカーなめこ。

130927_kobatosensei.jpg幼少期の大八は呪いで左手が閉じっぱなしなんですが、クラッカーなめこは左手をぎゅっと握って紐を引っ張られないようにしてるんですよ。

130927_kobatosensei.jpg成長して立派な犬士になった大八が再登場するシーンではド派手にクラッカーを鳴らしたりしてます。

▼幼少期・大八(左手に注目)
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▼八犬士随一・大八
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130927_kobatosensei.jpg他にも蟇田素藤(ひきたもとふじ)という額に十文字の傷をつけられた悪役にはレナードなめこを当てています。

▼額?に十文字のレナードなめこ
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0920_danboru.pngふ...深すぎる...。

130927_kawai.jpg原作を読んでからもう一度この『八犬伝』を読むと何倍も楽しくなりそうですね。



◆有島武郎「カインの末裔」
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0920_danboru.png第③巻で僕はこれが一番難しかった!!

0920_danboru.pngどんな読み方をしたらいいのかわからなかったんですよ。

130927_kobatosensei.jpg主人公の仁右衛門は荒くれ者ですが結構ピュアな心を持ったひとなのではというところからおばけ白なめこをキャスティングしました。

130927_kawai.jpg大柄だから白なめこではなくておばけ白なめこなんですね。

130927_kobatosensei.jpg意外と子ども思いだったり、乱暴をはらたくけど奥さんのことが好きだったり...。

0920_danboru.png世渡りや人付き合いが苦手なところも純真さ故というところですかね。


130927_kobatosensei.jpgとはいえやっぱり仁右衛門はひどい奴なので、見た目的におばけ白なめこならマイルドになるかなってのもありました。

130927_kawai.jpg逆に私は「カインの末裔」以来おばけ白なめこの印象が変わりました笑


0920_danboru.pngあとネームチェックのときに「プラオ」が何なのか分からなくて。

▼プラオ
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130927_kobatosensei.jpg編集部でプラオを調べてもらったら「これかな」という候補が3つ出てきました。

130927_kobatosensei.jpgその後外国語でも調査をした上で正式なプラオを探し出したんです。

0920_danboru.png今では使わない昔の道具とかを正しく表現するのって難しいですよね。

130927_kawai.jpgゲーム開発の現場でも、たとえば鎧の設定をつくるときにひとそろいになった鎧と単品パーツのときで呼び方が変わることがあったりして苦労します。

130927_kawai.jpg文字情報を絵で表現することは、こういう部分にも配慮しなければいけないんですね〜。

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0920_danboru.pngというわけで『なめこ文學全集』第③巻の作品について、小鳩先生に詳しくお話を聞かせていただきました。

130927_kawai.jpgさらっと読んだだけでは気がつかないこだわりや、作品にこめたテクニックなど裏話がたくさん知れて楽しかったです。

0920_danboru.png130927_kawai.jpg小鳩先生、ありがとうございました!

130927_kobatosensei.jpgありがとうございました〜!!

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『なめこ文學全集』の特設ページでは
・芥川龍之介「蜘蛛の糸」(第1巻収録)
・太宰治「走れメロス」(第2巻収録)
・堀辰雄「風立ちぬ」(第3巻収録)の3作品を無料で試し読みができるほか、第3巻購入特典の描きおろしペーパー配布書店リストも掲載しています。
ぜひチェックしてみてください!!

『なめこ文學全集 なめこでわかる名作文学』特設ページ
http://www.gentosha-comics.net/nameko_bungaku/

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なめこ文學全集 なめこでわかる名作文学(3)
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    作者:小鳩まり
    サイズ:B6判並製
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    ISBN:978-4-344-82921-3
    発売日:2013年9月24日

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