『なめこ文學全集』第３巻発売記念！小鳩まり先生特別インタビュー（前編）

2013.9.27

『なめこ文學全集』第３巻発売記念！小鳩まり先生特別インタビュー（前編）

なめこが文学を楽しくするマンガ『なめこ文學全集なめこでわかる名作文学』第３巻が、9月24日に幻冬舎から発売されました。

これを記念してコミカライズを担当する小鳩まり先生になめこのこと、文学のこと、更にはマンガ制作のテクニックに至るまでディープなお話をお聞きしました。
（２時間ものロングインタビューになってしまったため、前後編の２回にわけてお届けいたします）

▼発売されたばかりの第３巻を手にお話をうかがいました

写真手前・小鳩まり先生　写真奥・なめこデザイナー河合
（聞き手・ダンボールなめこ）

----------

第3巻発売&累計40万部突破おめでとうございます！！

ありがとうございます〜

表紙のイラストがすごいインパクトですね

１巻、２巻とは違う雰囲気を出したかったのでコシカケを出してみました。

あとは本を読んだ後って誰かに話したくなったり、思わず作品の感想を友達や家族と語りたくなったりしますよね。

そんなイメージをこのカバーイラストでは表現しています。

▼１巻・２巻表紙
　

▼3巻表紙

あとマサル

あそこに佇ませるにはマサルかなって（笑）

絶対マサルはなめこの話聞いてないでしょうけど（笑）

表紙をめくると現れる口絵も素敵です。

3巻に収録されている原作は「自然」や「季節」を根底にした作品が多いなと感じまして。

自然そのものをテーマにしていなくても、例えば登場人物の心情を自然の移り変わりで表現していたりするんですよ。

そういった部分もあって「自然」「季節」が大事だな〜って思って描きました。

▼自然と季節を織り込んだ素敵な口絵

僕は「なめこSeasons」の〈雪〉〈恋〉〈花〉〈雨〉を示していると思っていたのですが。

特にそういったコンセプトはありませんが、「自然」「季節」を大事にしたことからうまく「なめこSeasons」にリンクしたかもしれません。

そうだったんですね！あまりにしっくりくるのでてっきりそうなのかと思っていました。

本編を詳しくうかがう前に少し『なめこ文學全集』で気になっていたことをお聞きしたいのですが。

実は連載初期とくらべて書き込みが増えていると感じてるのですが、当時と今とで何か変化はありますか。

（物語はフィクションでも）文学は実在する場所を参考にして書かれていることが多いので、その時代を反映した舞台をきちんと用意したいと思っています。

さらになめこは服を着せることができないので、キャラクターに頼らず背景だけで時代設定や物語の舞台を伝えるために次第にそうなっていきました。

（ここからなめこデザイナー河合が登場）

アプリの「なめこ栽培キット」内でもなめこ自体は単純なデザインだけど、（プレイヤーの没入感を出すために）背景やオブジェクトはしっかり書き込むようにしています。
小鳩先生のなめこも、緻密な画面に立たせることでちゃんとそこに「いる」感じがします。

アプリと漫画が同じ理由で画面の密度をあげているのはおもしろいですね。

なめこの表情を見せることが展開上必須のシーンはどのように書いていますか。

「ごんぎつね」でごんを撃った直後の兵十や、「舞姫」で精神を病んでしまったエリスの表情などが特に素晴らしいです。

▼ごんを撃った直後の兵十（「ごんぎつね」より）

▼精神を病んでしまったエリス（「舞姫」より）

主に気をつけているのは「目の大きさ」「口の開き方」「塗り方」などで表情に変化をつけています。

あとはなめぱらの4コマや「世界のなめこ図鑑」（エンターブレイン刊）も参考にしています。

なめこはあまり極端な表情ができないため表現の幅が限定されるのですが、その幅をとらえてうまく見せているなと思います。

なめこの演技はどうですか。

もう３巻目なので違和感もなくなってしまいましたが、ふと我に返るとなめこが文学を演じていることのミスマッチ感がやっぱりおもしろい。

今回でいうと宮沢賢治原作の「やまなし」は「蟹」「魚」「やまなし」と、ミスマッチのオンパレードでした。

▼蟹（の子供）

▼魚

▼やまなし

「あれはやまなしだ」って言い切っちゃうところが素敵ですよね。

「ちげーよ！なめこだよ！」って（笑）

（ここで担当編集べ氏から「ネームの上がりが過去最速だった」とのタレコミ）

「やまなし」は自分も好きなお話で、純粋に漫画にしていくのも楽しかったです。

連載用の作品だったので、第２巻の単行本用描きおろし作品（幸田露伴「五重塔」と小林多喜二「蟹工船」）の合間を縫って作業していました。

「やまなし」では水中の泡が存在することで空間の奥行きや色合いを出しているんですよ〜。

お、その話は詳しく聞いてみたいです。

ちょちょちょ！ちょっと待ったー！！

ちょうど第３巻収録作品が出てきたところで、ここからインタビューは後半戦に突入します。

インタビュー後半は第３巻の各話の制作秘話などを聞いていきたいと思います。次週9月30日（月）に更新予定です！どうぞお楽しみに！！

なめこ文學全集　なめこでわかる名作文学（3）
［バーズコミックス　スペシャル］
    作者：小鳩まり
    サイズ：B6判並製
    価格：650円（本体価格619円）
    ISBN：978-4-344-82921-3
    発売日：2013年9月24日

エルパカBOOKS
アマゾン
 楽天ブックス
 セブンnet

第１巻発売時のインタビューもあわせて読む
『なめこ文學全集』発売記念！漫画家小鳩まり先生に直撃インタビュー
//namepara.com/atochi/info/report/848.html

----------

さらに9月28日発売「comicスピカ」No.24には、『なめこ文學全集』最新話が掲載されています。

今回なめこが挑戦したのは、「まだあげ初めし前髪の」でお馴染みの島崎藤村「初恋」です。

なんと『なめこ文學全集』初の詩に挑戦している本作、瑞々しい思春期の恋心をなめこがどう演じるかにも注目です。